「欲しいのかい?」と声をかけられて、斜め上を見上げた。
見知らぬお婆さんが立っていた。
仕事帰りに大型スーパーに立ち寄った。
その中の花屋さんの店先に、瓶詰めにされたメダカが売っていたので
スーツを着たまま、屈んで、メダカを眺めていたのだった。
小さなビンには蓋が閉められていて、5匹程度のメダカが泳いでいる。
3種類あって、微妙に身体の色あいが違う。大きさも違う。
欲しいな〜って思いながら眺めていた。
「はい、可愛いなって思って・・・」
「水はどうするの?」
「変えます」
「餌はどうするの?」
「ビンについてます」
「そう・・・でも、すぐ死んじゃうよ」
そう言われて、よくよく注意してみると、ビンの下に石が置いてあるのだが
そこにメダカの亡骸も確かにある。
そうか・・・死んじゃうか・・・
名残惜しくて、ビンを持ち上げてメダカを見つめた。
小さな命だけど、狭いビンの中だけど、元気よく泳いでいる。
諦めて、買わずに帰宅した。
小さくても、生きているものが側にほしかったんだなって思ったら
運転しながら、前がかすんできた。
ダメだな〜・・・ちょっぴり反省するのである。