日々の生活で感じたこと
研修の中で考えたことなどを
折々に触れてお伝えしていきます
滲み出る感情
身体から滲み出る感情がある。
言葉に変換するより痛々しい。

時おり、近所でお見かけするご老人。
何度か立ち話をしたことがある。
背中がひどく曲がっていて、前屈みの姿勢で散歩している。
いつも犬を連れて。
若い頃から農作業を続けて、背中がまっすぐに伸びないとお聞きした。
老老介護の毎日だから、犬を飼ったのだとお話してくださった。
シーズーとプードルのミックスだというその犬は、とても愛くるしい顔だ。

車で出かける時、近所で信号待ちをしていたらその方が歩いていた。
独りで。
前屈みに。
身体全身から、悲しいような、苦しいような、
だけど、独りでも散歩をするんだという決意のような
綯い交ぜになったものが滲み出ていた。
私にはそう感じられた。

言葉にならない言葉。
それが本当の感情なのかもしれない。

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言葉の拙さ
国際ピアノコンクールでピアニストの辻井伸行さんが優勝した。
記者会見の様子や新聞記事を見て、とても心が動いた。

「もし一日、目が見えるとしたら何が見たいですか?」
というような(正確ではないかもしれない)質問が女性記者から出た。
この質問が適切なのか否かは、私には判断がつかない。
また、辻井さんが、どう感じたのかも私にはわからない。
ただ、私が記者としてその場にいても、そういう質問はしないと感じた。

「両親の顔が見たいです。花火や海が見てみたいです」
「今は心の目で見ています・・・」
これも正確ではないと思うが、このようなお応えがあったと記憶している。
心に、心のど真ん中まで届く言葉だった。
質問した記者より年下であろう彼のほうが、大人なんだろうと思った。

新聞には、感性を豊かにするために母親は美術館にも積極的に連れていき、
芸術の色、形、様子を語ったのだとあった。

自分ならば、生まれつき全盲の子供に、どうやって“言葉”で
自分に見えているものを伝えられるだろうかと、深く考えた。
暗い闇に音とともに打ち上げられて散ってゆく色とりどりの花火。
飽きることなく寄せては返す海の波。
木の葉を揺らす風。
窓ガラスをしたたり落ちる雨の粒。

自分の言葉の拙さに、胸が痛くなった。

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